ハイテク技術で命を救え!サーチ・アンド・レスキュー最前線

山と海に囲まれた日本。
一年を通して海難・遭難事故の報道を目にする。

僕自身、登山、そしてダイビングをするため、決して人ごとではない。
自分の命を守るために、僕は登山ならアマチュア無線機とGPSを持参するし、
ダイビングでもナビゲーションには細心の注意を払っている。

さて、レジャーの場合、基本は「自己責任」という論調には概ね同意だが、
船舶の海難事故、台風、地震、津波、悪天候等の災害による要救助者が出た場合、捜索する側にはどのような技術があるのだろうか。

FLIR(forward looking infra-red:赤外線前方監視装置)と呼ばれる機器がある。

国境警備用のFLIR

国境警備用のFLIR

仕組みを一言で説明すれば、「熱を検知して、画像に変換して描き出す」とでも言えばいいのだろうか。
例えば上記の写真のFLIR装置は、暗闇で20km先の人間を見つけることができる。

このFLIR、以前は軍需用途ぐらいでしか使用できないほど高価だったのだが、ここ数年で急激に価格破壊が起きている。
(参考記事: 非冷却遠赤外線カメラ市場編●自動車のナイトビジョン・システム向けに需要が急増

従来は軍需向けを中心とした高額品の冷却型遠赤外線カメラが大半を占めていたが、室温で動作する非冷却タイプの遠赤外線アレイ・センサが登場したことにより、非冷却タイプの遠赤外線カメラの開発が進展、民間向けに活用できる条件が整ってきた。最近では、欧米自動車メーカーの高級車を中心にナイトビジョン(夜間時にも人物や動物の熱(赤外線放射エネルギー)を検知し画像表示する)向けに非冷却遠赤外線カメラの搭載が徐々に進んできており、今後の民間向けへの商機拡大のターニング・ポイントとして注目されている。

日本でも、レクサスなど一部の高級車にはオプション装備としてナイトビューが付けられる。

LEXUSナイトビュー

LEXUSナイトビュー

最近だと、米FLIR Systems社が「Flir One」というiPhoneを赤外線カメラにする349$のモジュールを発表したことが大きなニュースになった。

今春発売予定!

今春発売予定!

このように急速に低価格化がすすむ赤外線カメラ。
諸外国でも、今までは高価なため導入をためらっていた行政機関が導入に踏み切りつつある。

FLIR System社のホームページには厳しい極寒の海で活躍する、ノルウェー海難救助隊の導入事例が掲載されていた。

赤外線画像:低価格な人命救助技術
フリアー社製カメラをGideon号に導入するというニュースを聞いて、Andersen氏は大喜びしたといいます。「ずっとフリアー社製カメラを使ってみたいと考えていました。数年前、フリアー社製カメラが軍事用へリコプターでのデモンストレーションに参加したとき、すぐに、このカメラは探索救助活動で使えると思ったのです。しかし、当時、赤外線カメラはとても高価で、私たちの予算では購入は不可能でした。ここ数年、ようやく予算にみあう価格になってきたのです。」

このように国境や船舶に設置するような固定タイプの他に、ハンディな機種も多数登場している。

双眼鏡のような外観

双眼鏡のような外観

このようなハンディタイプでも1.2km先の対象物を確認できる性能があるという。(カタログPDF

FLIR sample

またFLIRは煙、雨、霧などの肉眼視界が悪い時でも威力を発揮するらしい。
雪山での捜索などでは、吹雪など視界が極めて悪い際の性能も重要だ。

(以前の記事で紹介したRICOH PAIR双眼鏡の大気障害除去機能も凄かった! ↓)

FLIRのような赤外線カメラ、そしてRICOHの大気障害除去(PAIR) システムなどを搭載した機器はサーチ・アンド・レスキューには極めて有効だろう。

そして、個人的に注目しているのがクワッドコプターへの搭載だ。
最近ではAR.Droneなど、個人が数万円でiPhoneで操縦できるヘリを購入できる時代だ。

すでに、スカイウォッチ社という会社が3cm×2cm×2cmという小型のFLIRを搭載した監視用の無人機を開発している。

FLIR搭載クワッドヘリ

FLIR搭載クワッドヘリ

このFLIR+クワッドヘリの組み合わせは、捜索において大きな威力を発揮するのではないだろうか。
有人のヘリを飛ばせない悪天候下でも各種センサー満載の無人クワッドヘリなら可能なこともあるだろう。
Ar.Droneのような華奢なヘリでは滞空時間や耐久性が心もとないが、アメリカ軍が1992年に開発した「サイファー」は、以下の様なハードな使用に耐えうる仕様である。

ペイロード:23kg
上昇限度:8,000ft
航続時間:3時間
最大速度:100km/h
航続距離:90-125km

登場して10年以上過ぎた技術であり、Ar.Droneが市販される今、行政での捜査・救難機として開発・配備することも十分可能なのではないかと想像する。

地震などの大規模災害の発生と共に、FLIRなど各種センサー、カメラのついた多数の無人機を飛ばせば、被害の把握、救助への活用が期待できると思う。

東日本大震災、地震発生直後に自衛隊基地から被害状況把握の為に飛び立ったヘリからの映像が公開されているが、
霧、煙で視界が悪いシーンもあり、FLIRなどのセンサーが搭載されていれば、より詳細な監視活動ができたのかもしれないと少し歯噛みする思いだ。

被救助者の命を救うため、そして、過酷な現場で人命を守る為に監視任務につく人々の負担を減らすために、
各種センサーを迅速かつ、ふんだんに現場へ導入するのは大切なことだろう。

iPhoneにつける赤外線カメラが3万円で登場する時代。
最も赤外線カメラが必要な最前線で働いている人たちが、真っ先に恩恵を受けられるべきである。






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