午前三時のスマートウォッチ

Essay
衝撃、粉塵、水は避けて通れないからね

去年の夏から、つい先月まで、真夜中の空港で働いていた。
誘導路の上で各種センサーをピコピコさせて、あれこれするお仕事である。

夜の空港

”夜の空港” 夜の空港内は信じられないくらい美しいのだが、重要施設なので中の写真撮影はNG。

 

フリーランスとしての仕事に余裕ができたため(廃業寸前)、時間を持て余し、ふと見つけた仕事にふらっと応募し、そのままあれよあれよというままに半年間、真夜中の空港で働くこととなったのである。
国内線の便が終わり、朝の便が来るまで一時的に閉鎖される誘導路。
閉鎖とはいっても、カラーコーンで仕切るだけ。すぐ横を国際線の747が走り回り、ジェットエンジンのバックブラストでよろめくような環境だ。

東京とはいえ、気温が氷点下に下がる真冬の真夜中、雨や雪、突風吹きすさぶ広大なアスファルトの上へ。
今までオフィスや自宅のPC前でしか働いた事がなかったチキン野郎が、着慣れないヘルメット、作業服、安全靴に身を固め、過酷な現場に出て、そして気づいた。

●スマートウォッチがすごく便利!

何回かこのブログでもとりあげたSONYのスマートウォッチ、「smartbandTALK」

SmartBand Talk

SmartBand Talk

実は一回、「これは使えん!」とバッサリ切ってしまっていた。

電車での移動時でも、活字中毒とガジェット中毒が相まって常にスマートフォンを手にしている自分にとって、スマートウォッチが真価を発揮する場面が無いのだ。
「通知を通知」するのが仕事のスマートウォッチは、四六時中スマホを手にしている人にはあまり必要無いと気付いてしまったのだ。

以前の記事ではこう書いていたが、環境が変わり評価が一変した。

例えば、真冬の夜中三時、雨の屋外で片手に機材をもっている状態で誰かから電話がかかってきたとしよう。

どうするか?まず、機材を起き、作業着のポケットからスマホを取り出し、手袋を脱ぎ(軍手程度ならともかく、厳冬期用の防寒手袋やゴム手袋をしていたら手袋モードでも操作はできない)、凍える指で画面をフリックする必要がある。
しかしSmartBand Talkを使うと防寒手袋をした状態でもスマホを取り出すことなくハンズフリーで通話ができ、実際にとても重宝した。

※身も蓋も無い事を言ってしまうと、この状態でも防水のガラケー使っていればほぼ問題は解決だ。首から下げたガラケーをパカっと開いて、厚い手袋越しに通話ボタンを押して、一件落着である。実際、現場ではプロほどガラケーを使っていた。

余談ながら、タフブックなどの現場用PCや各種専門機器も使ったが、ことごとく感圧式のタッチパネルが採用されているのが印象的だった。現場で使うガジェットには色気は要らないのだ。
「マルチタッチ?色再現性?どうでもいいわ。それより画面が濡れていても、手袋越しでも確実に操作させろ!」枯れた技術こそ正義だったのだ。

本題に戻る。
夜間、屋外で働いてみて身にしみたのが、「天気」が重要な関心事になることだ。
実際、同僚と顔をあわせれば、まず天気の話が始まる。
気温、雨、風、下手をすれば直接自分の安全に関わることなので一に天気、二に天気なのである。

SmartBand Talkではスマホの画面上にくる通知は、基本SmartBand Talkのディスプレイ上でも表示できる。
これを利用して、Yahoo天気の「雨雲の接近通知」を表示させていたのだが、これがものすごく有り難かった。
この機能は雨雲レーダーを元に雨の降りだす直前に通知をしてくれるものだ。
胸ポケットに入れたままのスマホのバイブだと他の通知と判別できないのだが、SmartBand Talkを経由することで手首のディスプレイで降雨前に確実に確認できたのだ。

Yahoo天気!

雨雲接近の通知が手元で確認できるので、重宝した。

さて、すっかりホコリをかぶりかけていたsmartbandTALK、一躍脚光を浴び第一線に復帰!
同僚も「便利だな!」とものすごく食い付いた。

しかし。

1ヶ月後、僕は不便さに耐えながら普通のG-ショックを使っていたのである。何故だろうか?
実は次の写真をよく見ると現場で使うのに致命的な欠点が浮かび上がってくる。

あそこです

あそこです

 

バッテリーの持ち? いや、一日持てば十分。仕事だから毎日充電するくらい止む得ない。
バックライトが無いこと? 投光車やヘッドランプ等装備が充実しているので、現場は想像以上に明るい。
有るに越したことはないけど、絶対必要というわけではない。

答えだが、実はベルトの固定方法にあった。

デザイン性、もしくは着脱性を重視したのか定かではないが、普通の腕時計と違い、ピンで簡単に固定するだけの方式なのだ。普通の時計ならゴムバンドが千切れるくらいの相当な力をかけない限り、意志に背いて時計が外れることはないが、このスマートウォッチは容易に外れてしまう。

これが必要だったんだ!

これが必要だったんだ!

 

ちょっとした荷物の運搬や設置をするときに少しひっかっかっただけでも外れてしまうのだ。
滑走路・誘導路でこれを落としたらどうなるか?
紙一枚、ネジ一本落としただけで大規模捜索になってしまうような現場で使うことが出来なかったのである。

正直、この環境で使ってみて初めて気づいたポイントだった。
デスクワークで使っていたり、仮に自分がこの製品の企画や設計をオフィスでしていたら絶対に気にも止めなかったポイントである。
しかし、道路や鉄道、工場など脱落物が致命的になってしまう環境下では使えないものだった。
たった1つの部品が足かせになってしまっていたのだ。

さて、ここで持論。
オフィスワーカーにスマートウォッチは不要。だが、過酷な現場での潜在需要は非常に多いと感じた。
通話を優先させるためにあえてスマホに移行していない人には通話機能は非常に魅力的だし、スマホに移行している人達も通知機能などの利便性に大きく心惹かれると思う。

現時点で、「ぼくのかんがえたさいきょうのスマートウォッチ」はBluetooth接続可能でありながら、耐衝撃構造&20気圧防水というタフなガワを持つCASIOのGBA-400にsmartbandTALK並の液晶と通話機能を詰め込んだものだ。
これは売れると思う。なにより需要がある。

衝撃、粉塵、水は避けて通れないからね

現場で使うには衝撃、粉塵、水は避けて通れない

 

今、改めてsmartbandTALKの紹介ムービを見て思う。
狙うべきはこの層ではない。小洒落た、ふんわりムービーを作ったところでこの層はほぼ買わない。

メットを被った泥くさくてかっこいい男が登場し、機能をアピールするGEORGIA的なCMが必要だ。(↓こんなの)

ターゲットを変えた上で、金具を改良したsmartbandTALKを出せば今の在庫分くらいは余裕ではけるのではないだろうか。

AppleWatchを筆頭に、元気の無いスマートウォッチ、ターゲット設定をそもそも間違っていたのではないだろうか。
スマートウォッチ元年、まだ元旦の午前三時くらいだ。
まだまだチャンスは十分ある。







コメント

  1. […] SONYのスマートバンドトーク、ぷろとという機種である。 (参考記事:午前三時のスマートウォッチ) […]

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