タクシーとラジオ深夜便の追憶。そして、Uber。

Essay
ドナドナドナ~社畜を乗せて~

昔務めていた会社は、仕事の都合上帰宅が終電後になることが多かったので、毎晩のようにタクシーで帰っていた。
電車で1時間の距離なのだが、深夜の首都高をかっ飛ばすタクシーを使うと20分くらいで自宅に着く。
タクシー代は高速代入れて1万円もするのだが、会社がポーンと出してくれた。
今思えば幸せな環境だった。
(リーマン・ショックを期に「死んでも終電で帰れ令」が出て、この慣習も終わった)

さて、仕事でヘトヘトになってタクシーに乗り込んだ時、一番困ってしまうのが饒舌な運転手さん。
もちろん悪気はないのだが、こっちは口をきくのも億劫なくらい疲れていると、もうどうしようもなく辛い。

ドナドナドナ~社畜を乗せて~

だが、そのうち深夜のタクシーで唱える呪文を覚えた。
「NHK第1のラジオ深夜便をかけて下さい」である。

ラジオ深夜便は、毎晩夜0時から始まる番組で、ターゲットはどちらかというと高齢者の方向けの番組。
年配のアナウンサーが気怠い語り口で静かに話す雰囲気が、疲れきった身体に心地よい。
運転手さんも「話しかけてくれるなオーラ」を感じるのか、これをかけてもらうと、ほぼ話しかけてくる事がない。

深夜タクシーでぐったり疲れている時はぜひ試して頂きたい。

さて、なんで突然こんな話かというと、今日初めてハイヤー配車サービス「Uber」を使ってみたからである。
きっかけは、Uberのスキャンダルのニュース
何でも、「God View」というUberユーザーがどこを移動しているのかをリアルタイムで見れるモードがあり、UberUSAの管理職ならそれを好きに見ることができるらしい。
これの悪用が問題になり、TechCrunchに取り上げられていたのだった。

このニュースを見ていて、そういえばUber登録してあったし、試しに使ってみるかなと思い立ったのである。
よりによって、このタイミングで初Uber。

どうしようもない天邪鬼である。

Uberのインターフェイスは既存のタクシー配車アプリと同じような感じで、迎車先にピンをドロップして呼び出すする方式だ。
他のタクシー配車アプリと大きく異なるのが、事前にクレジットカード情報を登録しておくこと。
つまり下車時の精算が必要なく、さっと降りられるのが大きなメリットである。
1万円札のお釣りを巡る運転手さんとの攻防や、クレジットカードで払いたいのにリーダーの調子がおかしくて読み取れないなど、タクシーの精算時は一番の鬼門だが、事前にカード情報を登録しておく仕組みは素晴らしい。
乗客も楽だし、Uberも料金の取りっぱぐれの心配がないお互いハッピーなシステムである。

車を呼びたい場所にピンをドロップすると、近くのハイヤーが何分くらいで到着するかが表示される。
そして、どこに行きたいかも予め設定ができるので、乗車後もいちいち道順を説明する心配が無い。

呼び出した状態。自分の元に向かうハイヤーの位置がリアルタイムでわかる。

なおステータスはスマホの通知センターにも表示されるようになっていた。

今回は使っていないが、割り勘機能も使えるようだ

そして、ほぼ時間通りにハイヤーが到着。
運転席には7インチのAndroidタブレットが設置されており、そこに配車先と送迎先が表示されていた。

また、移動中も自分のスマホ側ではハイヤーの現在位置や目的地までの参考ナビルートがリアルタイムに表示されるようになっている。
ルートを巡る疑心暗鬼も産まず、実に明朗で良いシステムだと思う。

現在位置、推奨ルート、予想所要時間が表示される

目的地到着後、アプリ上にはドライバーの評価を5つ星で入力する画面が。
そして、下車した途端にメールが到着。

その中には移動ルート、ドライバー名、乗車時間、距離等が書かれた、これまた明瞭な領収書。

ニコニコ明朗会計

初Uberだったが、このシステムはとても気に入った。
また値段もそれほどタクシーと変わらないのに驚いた。黒塗りの良いハイヤーで迎車に来てもらい、2.07km、約8分の乗車で1310円。
うん悪くない。

また、アプリをインストールして招待コード「k2nt3」を入力すると、2000円分の無料乗車チケットがもらえるので、興味のある人はぜひ試してみてほしい。
ちなみにアプリをインストールし、登録すると一人ひとりに招待コードが発行される。
これを他の人に教えると、教えられた人、教えた人双方に2000円のチケットが付与されるようになっている。

なんだか無限連鎖講を彷彿とさせるシステムだが、スタートアップ時のプロモーションとしてはとても有効だろう。
とはいえあまりにも美味しい話なので、利用者の増加と共に早晩無くなると予想する。

以上、タクシー界に海外から殴りこみをかけてきたUber、とても優秀な黒船だと感じた。