私事、今月末まで新宿で働いている。
8月下旬、西新宿の高層ビル群に巨大なオブジェが登場した。
「新宿クリエイターズフェスタ2014」というイベントに登場した作品の一つである。
間が悪い事に、このイベントと時を同じくして、69年ぶりに海外渡航歴の無い人が代々木公園で蚊に刺され、デング熱に感染というニュースが駆け巡った。
程なくして、新宿中央公園でも感染症例が発生。
新宿中央公園からわずか200メートルほどの位置に座するこのオブジェのシュールさは相当なものだった。
オフィス内で食事するより、外で食べる派の自分は昼休みにはこの巨大オブジェと対峙し、蚊に恐れおののきながらおにぎりを頬張っていたのだった。
さて、バイオセーフティレベルという尺度がある。
細菌やウイルスを扱う施設、設備の格付けであり、4段階で表される。
ちなみにこのデング熱は「レベル2」で扱わなくてはいけないウイルスである。
レベル2とはウィキペディアによると、
レベル2
実験室の扉には、バイオハザードの警告が表示されなければならない。
許可された人物のみが入室できる。
実験中は窓・扉を閉め、施錠されなければならない。
オートクレーブは実験室内に設置されなければならない。
生物学用安全キャビネット(クラスIIA以上)の設置。基本はその中で作業する(エアロゾルが発生しない作業はキャビネット外でも可)。
実験者は、作業着または白衣を着用すべきである。
種名がわからない検体など「適切なリスク評価を実施するために必要な情報が(中略)不足している場合(中略)には、基本的な封じ込め策-バイオセーフティレベル2」を適用する
というレベルである。
お馴染みのバイオハザードマークが登場するのはこのレベルからである。
仮にゲームであれば、新宿のマップはこんな感じに表示される筈である。
だが現実世界では、人の脳がリスクを見て見ないフリをする。
「まあ、何だかんだ言って大丈夫でしょ」「だからって仕事は休めないし」と。僕もそんな一人である。
そうしているうちに、今日もデング熱感染者が増えたというニュースが流れていた。
さて、先ほどのバイオセーフティレベルで最高度の警戒が必要なバイオセーフティレベル4で扱うウイルス。
その代表格がエボラウィルスである。
デング熱の騒ぎの前に一時期騒がれていたが、めっきり報道も減り、既に過去のことと思っている方も多いだろう。
しかし、今回の流行は過去の小規模な流行とはレベルが違うようだ。
英語版Wikipediaでは感染者、死者の統計が日々更新されているのだが、指数関数的に増えている。
もはや封じ込めは困難な状況であり、年末には感染者が28万人に達するとの推計もある。
(ソースは新華社通信なので、それを加味して見て欲しい)
世界レベルで「何だかんだ言って大丈夫っしょ!」とか言っていると、本当に危機的な状況になる可能性もある。
今日、米軍が3000人をリベリアに派遣するとのニュースがあったが、もはや人事ではない。
明日にでも日本でエボラを発症する人が出るかもしれないのだ。
Plague Inc. -伝染病株式会社- – Ndemic Creationsというシミュレーションゲームがある。
これはウイルスや細菌の立場になって、いかに人類を駆逐するかというゲームである。
このシミュレーションをプレイして見ると、現代の発達した交通網がいかに脅威かが解る。
「検疫」という英単語の語源はイタリア語の「40日」という意味だそうである。
黒死病に脅かされた中世のイタリアで疫病感染の疑いがある人が乗った船を40日間港の外に隔離したことから来ている。
かたや現代、アフリカから日本まで20時間前後で移動が出来る。
エボラウイルスの潜伏期間は通常7日程度。
いくら空港にサーモグラフィーカメラを並べてもなんの対策にもならない。
ガジェットをもってしてもウイルスには無力である・・・。
ウイルスの自滅的な突然変異などで、今回のエボラ感染が終息する事を切に願う。