時はミレニアム。
学生時代、1年間だけ個人的な都合で一人暮らしをしていた時がある。(今はパラサイトである・・)
東京都下にある小さなワンルームマンション。
ベッドを置いたら、もう2畳ほどしかスペースのない、それはそれは狭い物件に住んでいた。
冷蔵庫、炊飯器など最低限必要な機器を搬入し終わり、テレビまわりをどうするか考えていた時、
(当時はブラウン管最盛期) 立ち寄った立川の中古ショップで見つけたのがこれだった。
オリンパスのヘッドマウントディスプレイ、Eye-Trek FMD-250Wである。
たしか中古で2万円くらいだったと思う。
当時の僕はPS2とVHSデッキ、そしてこのHMDで1年を乗り切るという、当時としては無謀な決断をした。
VHSデッキはTVチューナーも内蔵していたため、TVもこれで事足りるだろう、という目論見だった。
結果は・・・大成功であった。
この1年間の視聴環境は今思い出してみても、快適なものだった。
寝ながらTV、DVDはもちろん、PS2に繋げてグランツーリスモ3に夢中になったのもこの時期である。
ハンドル形のコントローラー、ペダルを机に固定し、HMDをかけてゲームに冒頭していた。
勉学はもちろん疎かに。今思えば人生の岐路だった・・。
(ちなみに、HMDでアレなアレを見ると、凄い!無防備になるのが弱点)
困るのは友達が泊まりに来た時などである。
大体友達はドン引き。一緒にTVを見たり、ゲームを複数人でプレイすることもできない。
何人かでいるときに、「ゲームしようぜ~」となった時は悲惨である。
一人がHMDをかけてゲームに没頭、そしてそれを見守る僕と友人の息詰まる沈黙。
流れる実に気まずい時間。今思い出してもちょっと胸がキュッとなる。
このオリンパスのHMDはJALのファーストクラスに採用されるなど、ほんの一瞬盛り上がったが、
そのままHMDブームは終わってしまう。
僕も孤独な一人暮らしを終え、いつしかHMDから遠ざかる日々が続いた。
そして、2008年。
まさかのNikonがヘッドマウントディスプレイを世に送り出す。
それもヘッドフォンと、単眼のディスプレイを組み合わせたぶっ飛んだ未来デザイン。Nikon UPである。
改めて宣言しておくが、このブログを書いている想いの一つとして、
「人柱」としての生き様を後世に残したい、というのがある。
もがき苦しむ人柱の生き様、しっかりと目に焼き付けておいて頂きたい。
僕はこのHMDを早速購入。
かなり高価で、10万近くした。「買っちゃったよ~」と言った時、
当時働いていた会社の同僚から蔑んだ目で見られたのが記憶に新しい。
肝心の使い勝手だが、まだiOS、Androidの普及前。
OSにはWindows Mobileが搭載されていた。
解像度、微妙。処理速度、微妙。使い勝手、微妙。
外出時につけるわけにもいかない外観、そして自分の部屋で使うには「単眼」という仕様から、映画鑑賞等には向かない。
数カ月後、この機器はそっと戸棚にしまわれることとなった。
まさに、「腐ってやがる。早すぎたんだ」という言葉がぴったり当てはまるガジェットである。
山手線を全車両ジャックして、ラッピング広告を出すなど大々的なプロモーションを行っていたようだが、
購入した人は僕を含め、せいぜい数百人くらいだと思う。
Nikon UPはあっという間に世間から姿を消してしまったのだった。
だが、5年後。このコンセプトにそっくりの製品、Google Glassが世間を賑わす。
コンパクトな半透過ディスプレイ、そしてこれまた小さな骨伝導スピーカーを引っさげ、メガネクイッ、である。
ニコン開発陣の心中察するに余りある。(でもおそらくこれ買っちゃう。ごめん!)
この他にも、去年くらいからSONYのHMD、HMZ-T1やT2が大人気になるなど、
ヘッドマウントディスプレイが再度ブレイクする予感がヒシヒシしている。
今後もHMD市場の最前戦に立ち、甘んじて傷を受ける覚悟である。
9/3追記: まるでこの記事の公開を待っていたかのように(考えすぎ)、SONYがHMDの新モデル、HMZ-T3を公開した。
今モデルからはバッテリーとWirelessHDを搭載して、完全にコードレスでHMDを使えるようだ!
惜しむらくは解像度が、前記種と同じく1280×720な点。
明日(!)9/4から銀座・ソニーショールーム、ソニーストア 大阪、ソニーストア 名古屋で先行展示とのこと。