子供の頃、毎月届けられる「学研」や「進研ゼミ」の雑誌を心待ちにしていた。
親の意図はともかく、子供の頭にあるのは毎月必ず付いてくる「付録」の事だけ。
「勉強のために読みたいよぉ~」
親にねだる子供は「実験セット」や「~観察キット」という、名前は仰々しいが、実態は体の良い”オモチャ”が欲しいだけである。
だが親は「まあ、お勉強になるものね・・」と財布の紐を緩めてしまうのだ。
肝心の本誌は読まれること無く山積みか、ポイー!となることが多かったのではないだろうか?
(僕が不まじめだっただけ?)
この「付録」作戦、今は雑誌界を席巻している。
先日、久しぶりに雑誌売場に足を運び、付録付き雑誌の台頭を目の当たりにして改めて驚いた。
女性誌から始まった「付録付き」ブームは男性誌、そしてそれ以外の専門誌でも当たり前のものとなってきたようだ。
女性誌コーナーはもはや雑誌というよりも、付録を売っているかのような光景。嵩張るパッケージが山と積まれている。
もはや「オマケ」とはいえないクオリティーの高いものが付くそうだ。
(ちょっと古いが東洋経済の良記事。『「宝島社」絶好調の理由、女性誌付録だけじゃない!』
付録付き雑誌の牽引役、宝島社の戦略について解説している。)
今回はPC関係の雑誌コーナーをブラブラしていたのだが、ここもまた仰々しいオマケ付きの本だらけで驚きだった。
+DESIGNING誌は、分厚いモリサワパスポートのフォント見本帳。
おとなのWindows誌にいたってはブルーライトカットメガネが付録として付いている。
(そもそもブルーライトカットメガネの効果って本当にあるの? 眉毛が唾でビショビショ)
完全に付録戦争だ。
そういえば、僕自身ここ1,2年で雑誌を買ったのは付録目当てで買った時だけである。
(週間アスキーのスマホ用の防水袋が付いてきた号と、トマトソースとスパゲッティサーバーが付いてきたエル・ア・ターブル。)
僕は自他共認める活字中毒だがここ数年で本や雑誌を買う機会がグッと減った。
どこにいてもスマホでネットに接続してコンテンツが読める時代、書籍に求めるのは本当にしっかり編集したプロの情報か、小説などの代替の効かないものだ。
特にガジェットやPC系の新製品情報を並べてただけのような雑誌は、あまたあるテクノロジー系のサイトに情報量・鮮度共に勝っているのはほぼ皆無だと思う。
(前述したアスキー誌もオマケをとって、本誌は読まないで捨ててしまった。ごめん!アスキー!)
今更僕が言うまでもないが、出版業界はこれからもますます衰退していく。
現状、雑誌の編集現場のモチベーションはダダ下がりだろう。
元編集者としての自分の感覚から言うと、「付録」での戦いになった時点でかなりモチベーションが下がっている筈だ。
内容はともかく、自分が心血注ぎ、締め切りや印刷トラブルと戦い、ようやく流通した本誌が付録だけ取った後はたいして読まれること無く終わる。
なんと非生産的なことだろうか・・。
いっそのこと出版社という業態を捨て、付録専業と言うか、「サンプル流通業」みたいな新しい業界を立ち上げた方が未来がある気がする。
情報の鮮度が大切なプレスリリースのまとめ的なコンテンツはもうネットにお任せして、付録に徹するのだ。
どう足掻こうと、数年以内に専門性のかなり高い雑誌以外は、どんどん廃刊に追い込まれていくはず。
編集者の皆さん、転職の準備は良いだろうか?
(一足先に露頭に迷った編集者より)