ドローン暗黒時代の幕開け

Essay

「首相官邸異状なし、報告すべき件なし。」

警備日誌にそう書かれていたかどうかは定かで無いが、首相官邸の屋上にドローンが2週間お泊りしていた事件は日本の重要施設の警備の甘さを世に知らしめた。
メンツを潰された偉い人たちは大層お怒りのようで、ドローン規制法案の策定が急ピッチで進んでいるようだ。

お遊び用ドローンの草分け、Ar.Droneを作ったパロット社の最新モデルBebop Droneは、10万円そこそこの値段でカメラを使っての遠隔制御、そしてGPS+グロナスを用いての飛行コース設定ができるなど、非常に高性能だ。
確かにこんな高機能なメカが重要施設の上空を自由に飛べてしまう現状は安全保障上良くないのは理解できる。

bebop drone

スマホでドローンが制御できる時代ですし・・

GPSがついていて、ウェイポイントも設定できちゃいますし・・

日経によると、政府は購入時に名前や住所の登録、飛行制限空域の設定、飛行距離の長い高性能ドローンは免許制にすることを検討中とのことだ。
また、大阪市は全公園でのドローン飛行を禁止する条例を制定するようで、やっとドローン身近になってきた!と喜んでいたガジェット好きとしては悲しいの一言に尽きる。

安全保障への思いと、ガジェット欲の間で心は千々に乱れるのである・・。

さて、今回の事件を期に、ラジコンヘリなどホビー用途の飛行物も面倒くさいことになりそうだ。
ドローンだけを規制対象としたらそれこそ「新参の電動ドローン」だけを狙った不平等かつ意味のない法律だとのそしりは免れないだろうし、ドローン愛好家も黙っていないだろう。
むしろ滞空時間の短い電動ドローンよりも、エンジンを搭載した高性能ラジコンヘリの方が悪用された場合の脅威度は高い気はする。

また、ホビー用途のラジコンヘリだけではなく、農薬散布用の無人ヘリコプターもとばっちりを受けそうだ。
YAMAHAなどは超高性能の無人ヘリを出していて、24リットルもの液体搭載量、離陸から着陸までのGPS制御、1時間単位の滞空時間を誇るモデルもある。

YAMAHA 「FAZER」。

このモデルですら現在は航空法は適用されず、農林水産航空協会(農林水産省管轄!)の指定の教習を受講し、半月ほどで取得できる「産業用無人ヘリコプター技能認定証」があれば飛ばし放題である。(とはいっても機体は1200万円するんですが・・)

ドローンに手を付けるということは、現状、航空法で野放しにされてきた分野にもちょっかいを出すこととなり、さぞかし官公庁の担当者は頭を抱えていることだろう。

海外に目を向けてみるとどうだろうか。
1年くらい前、このブログで「アラブ首長国連邦では無人機が住民票を配達する時代が来たようです」という記事を書いた。

その頃、アラブ首長国連邦は「1年後には免許証や住民票などをドローンで国民に配送するシステムを作るよ」と壮大に語っていて、まさにドローン利用の急先鋒だったのだ。

UAE! UAE!

今回のふとアラブ首長国連邦のドローンはどうなったかなと思い出し、現地のメディアを覗いてみると・・。
ドローン配送システムどころか、「レクリエーション用途でのドローン販売が禁止」されていたのだ!

どうやら法整備が整うまでの一時的な措置のようだが、全世界的にドローンの安全性や個人所有の是非が大きな争点となっているようだ。

ちょっと前、ドローンなどというものはメタルギアソリッドに出てくる敵キャラでしかなかった。
そんな機械がいつの間にか個人が気軽にポチれるようになっているという現実。
テクノロジーの想像以上の進歩がもたらす問題と、常に後追いをせざるを得ない法律。

法とテクノロジーのバランスを取るのはなかなか厄介だなといつも思う。