資生堂とセンサー。
一見、奇抜な組み合わせである。
今までは、自社の化粧品の使用感を把握しようにも、ユーザーの感覚的な感想を聞くしかなく、メーカーとしてももどかしかったのだろう。
資生堂はこのような使用感を、センサーを用いて定量的に測るという新たなアプローチに乗り出した。
資生堂のプレスリリースによると、
「肌に触れ合うときの指の力加減(触圧)と動きを同時かつ精密に測定できる〝指センサー〟を世界で初めて開発」したとのことだ。
この「指センサー」の特設サイトには、なかなか扇情的な文字が踊る。
肌と肌がふれあうという、限りなく繊細な感覚を数値化できると将来的に、化粧品以外の、さまざまな分野への応用が広がると言われています。
今、あんな用途やこんな用途を考えた人、猛省してほしい。
さて、人間の五感はじつに繊細にできている。
「インタフェースデザインの心理学」という本には、以下のように説明されている。
人間の五感の感度はどの程度か?
視覚
真っ暗闇で高いところに立っている場合、50Km先のろうそくの炎が見えます聴覚
ごく静かな部屋にいる場合、6mぐらい離れた場所にある時計が時を刻む音が聞こえます嗅覚
8m四方の空間なら香水を一滴落としても匂いがわかります触覚
皮膚の上に髪の毛を1本のせてもその感触がわかります味覚
8リットルの水に砂糖小さじ1杯を溶かしても味がわかります
Oculus Riftのような3D立体視用のHMDの登場で視覚は制した。
聴覚も今のオーディオ技術なら問題は無い。
残り3つの感覚、「嗅覚、触覚、味覚」の再現に成功する時。
もしかしたらそれが人類衰退の始まりなのかもしれない。
HMDを装着し、ビクンビクンしながら横たわる廃人が目に見えるようだ。
僕は間違えなく、廃人側にいることだろう。
でも、そんなマトリックス的な結末も決して悪くはないと思うのである。
ケーブルに繋がれて、ARの世界で生きるという、現実逃避の極みに一歩近づいた人類。
現代版「死の舞踏」の始まりである。