PCゲームにどっぷりハマってから、かれこれ二十数年が過ぎた。
640×400ドットの8段調モノクロディスプレイでゲームをしていた少年は、いまや30代のオッサンとなった。
より良いPC、グラボ、モニタを求め散財していった過去が、走馬灯のように浮かび上がる。
ゲームに没頭した夢のような学生時代はあっという間に過ぎ去り、
仕事でAdobeの各種ソフトを使うようになると、オッサンのモニターはどんどん横に枚数が増えていき、いつしか机の数も増えていった。
「このままでは、オッサンの机は東京証券取引所のようになってしまう・・」
モニターと机の増殖に危機感を抱いていた、今日この頃。
奇しくもデルアンバサダープログラムから、「VRイベント」へのお誘いがあったのだ。
「東京人柱遊戯」を名乗るこのブログ、好奇心だけは旺盛だが、いかんせん財政が追いつかない。
本格的VRに触りたくとも手に入れられず、溶けるほど親指をしゃぶっていたオッサンは、いそいそと会場へと向かったのであった。
ちなみに、現状我が家にあるVR関連機器といえば、スマホをVR利用するための中華ゴーグルと、TrackIRというヘッドトラッキングデバイスぐらいである。
フライトシムに使うと、こんな感じに頭の向きにあわせてモニターに映し出される視界が変わる。↓
当日。
ゲーマー約束の地(?)、恵比寿についた人柱。
金曜日の開放感もあいまって、ふらふらっとヱビスビアガーデンに吸い込まれそうな自分を制しながら会場に向かう。
なんせこれから体験するのは三半規管直撃!のVRイベントなのである。
「VR体験をしながら黄金の霧を吹く醜態を晒すのはなんとしても避けなくてはならぬ」
そんな事をぶつぶつ呟きながら、たどりついた会場。
そこには・・。
ゲーマーなら大抵目にしたことがあるだろう、お高いアイツ、ALIENWAREだ。。
そして、その横には・・
憧れの最新ヘッドマウントディスプレーが鎮座ましましていたのである!
htc viveでは、最低でもGTX970以上のスペックを要求してくるなど、VRのシステム要求はとても高い。
ちなみに我が家のPCのグラボGTX960でVRが存分に楽しめるのかツールで確かめてみたところ・・
結果、「VR 可能(可能とは言っていない)」とバッサリ切られてしまった悲しい過去がある。
しかし、この会場に並んでいるのは最新マシン。
きっとヌルサクのVRが体験できるに違いない―
そんな高ぶる気持ちを抑えながら、VRゴーグルを手に取り…と、その前にやることがある。
受付で渡された、目のところだけが切り抜かれた不思議マスク着用の儀である。
これは、「お前の顔脂とかマジ困るから(意訳)」みんなで気持ちよくVRを体験するために欠かせない儀式だ。
そして、いざ装着!
目の前に360度のスムーズに動く高解像度な仮想空間が広がる。
すぐにデモゲームが始まったのだが、圧倒的な臨場感とサウンド、そして没入感に驚いた。
スマホ用のVRゴーグルで簡易体験したことはあるのだが、解像感は桁違いだ。(ちなみにhtc Viveは1080×1200のパネル2枚)
そして、その視界がヌルヌル動く。
これはマシンパワー食うわけだ、と納得したのであった・・。
続いては、一風変わった雰囲気のブースへ。
そう、VRゴーグルを使ってロードレース。
全世界の人々と実在のコースを使ってオンライン対戦!というシステム一式が展示されていたのだ。
ヘッドマウントディスプレーだけでも相当なものだが、これに実際に身体をハードに動かすギアを併用すると、臨場感はさらに高いものとなることを実感した。
お家にいながら、ロードレースに参加する。そんな未来はすでに実現していたのだった。
その後、会場内を見て回るとゲーミングノートPCのコーナーが登場。
ヘビーゲーマーにありがちな「ゲーミングノートPC?ふ〜ん(半笑い)」という態度で見ていたのだが、ふと気づいた。
冒頭にも書いたように、自分の過去のゲーミングPCの購買行動を考えると、「大きな大きなモニターへの接続ありき」で考えていた。
しかし、VRはこの前提を大きく変える可能性があるのだ。
今後、VR機器が発展していくにつれて、ゲーマ、いや、全PCはユーザーはモニターと言う呪縛から開放され、どんな機器でも広大な視界を手に入れられることになる。
コンパクトでも高いマシンパワーを持つPC本体とVRヘッドセットが有りさえすれば、フルタワーPC+超大型モニター並の体験が出来てしまうのだ。
実際、製品ではないものの、ウェアラブルでVRゲームが楽しめるモニタレスPCは既に存在しているのだ。
もちろん、VRゴーグルでモニターの完全な代替は、現時点ではまだ難しい。
しかし、今後VRグラスとARグラスが融合すればゲームにかぎらず、全てのPC作業をモニタレスで行うことも十分可能だと思う。
例えば、見た目はモベリオみたいな半透過型の両眼ディスプレイに液晶シャッターをつけ、ゲーム時はワンプッシュで液晶シャッターが閉じ、閉鎖型非透過VRゴーグルに。
ただし、ゲームに没頭しているときでも、ボタン一つで液晶シャッターをオフ。すると視界が開け、現実世界が見えるようにする。
通常のPC作業時には現実の視界にモニターのホログラムを投影するこの半透過モードで使う・・。
↓こんなの
今回のVR体験中、そんな未来を想像してハアハアしていたのは秘密である。
気になった点もある。
今回、VRを遮蔽性の高いヘッドホンで体験して思ったのだが、外界の音声が完全にシャットアウトされるのが気になった。
没入感を深めるのには最適だが、すぐ隣の人との会話もできないし、各種通知音にも気づけない。
ヘッドホン部分は骨伝導もしくは、外部音モニター付きのデジタルノイズキャンセリングヘッドホンを採用するのが「普段使いのVRデバイス」への課題の1つだな~と実感した。
近い将来、筐体と無線接続され、バッテリー問題も解決された軽量ワイヤレスVR/ARグラスが出たとき。
そこには、全てのPCゲーマーの夢見た世界が広がる。
シームレスにバーチャルな世界が投影され、ボタン一つでゲームの世界と通常PC作業の世界を行ったり来たり出来る。
そのとき、モニターは既に無用の長物となっているかもしれない。
VRの未来が、PC筐体、そしてモニターのあり方を変える。そんな予感のしたイベントであった。