昨日、雑誌を読んでいたら今をときめく理研のある研究が紹介されていた。
「代替現実システム(Substitutional Reality System=SRシステム)」というシステムだ。
カメラ付きのヘッドマウントディスプレイとヘッドフォンをつけた被験者に、「録画された映像」と「目の前のリアルタイム映像」をシームレスに切り替えつつ見せる事で、現実と非現実の区別を付かなくしてしまうという、面白くも恐ろしい実験である。
動画での解説はこちら。
あまり有名ではないが、一旦カメラを通したリアルタイム映像に、オーバーラップしてコンテンツを表示させるデバイスは、既に市販されている。
例えば、VuzixのWrap 1200ARは加速度センサー、地磁気センサー、9つのジャイロを搭載し、ヘッドトラッキングも可能なため、上の実験と同じような体験が出来るはずである。
↓こんな感じに現実とバーチャルが融合する。
記事の中で、理研の装置を体験したある宗教学者は「これは現代版悟りである」と述べていた。
哲学や宗教では、この世は夢か現実か?という「胡蝶の夢」的考察がよく見られる。
理研のこのシステムを用い、明瞭な意識化で、夢と現実の区別が付かなくなる体験をした宗教学者は、本来厳しい修行を経て辿り着く悟りの境地が最新のテクノロジーでインスタントに得られることに驚いたようだ。
最先端のテクノロジーと宗教学の交差。この意外な出会いもまた興味深い。
マトリックスの世界観を始め、シミュレーション仮説がよくSFのモチーフにされるが、このような簡単な装置で現実と仮想現実の区別が付かなくなるのを見るにつれ、突拍子もない仮説とは言えなくなってくる。
さて、雑誌内のインタビューで、開発者はこの没入感を生み出す大きな要因として、「ビジュオモーターマッチング」という要素を挙げている。
自分の頭の動きと、見える映像がリンクした時、それが例え架空の映像であろうとも、現実の物と錯覚しやすいということらしい。
そういえば、以前の記事でも紹介した、TrackIR。
これも自分の頭の動きと、ゲーム内のキャラクターの視線をシンクロさせるデバイスである。
これをつけてFPSやレースゲーム、フライトシミュレーターをやっているとゲーム内に入り込んだような没入感を感じることができるが、これもビジュオモーターマッチングの一例なのだろう。
ここのところ急加速しているHMD、そして仮想現実体験デバイスの進化。
理研のHMDを始め、Oculus Rift(オキュラスリフト)、Googleグラス、SONYのHMD、EPSONのモベリオなど興味深いデバイスが百花繚乱。
今年は本当に面白い1年になりそうだ。